成長の限界 人類の選択 (その1)
Donella H.Meadows, Dennis L.Medows, Jorgen Randers. 成長の限界 人類の選択. ダイヤモンド社, 2005, 枝廣淳子訳.
ISBN 4478871051 (Amazon)
他人に環境問題でオススメの本を2冊教えてほしい、と言われたら、俺は間違いなく「成長の限界」と「緑の世界史」を挙げる。
本書は、その「成長の限界」の第3作。1970年代に出た「成長の限界」は、システムダイナミクスモデルWorld3とその答え、そして、今後、こんな環境問題が起こりうる、という示唆に留まっていたが、1990年代に出た2作目の「限界を超えて」は、顕在化している実際に環境問題が記述されていた。
そして、この3作目の「成長の限界 人類の選択」では、前作のBAUランに沿って世の中が動いてしまっていて、かつ、広範に環境影響、成長の限界あるいは破綻の兆候が顕在化してしまっている事例をいくつも挙げている。でも、著者(のひとり)が言うには、まだまだ、これからでも何とかならないことはないらしい。
環境問題への対処って難しい。この本に書かれているように、実際の影響は時間遅れをもって発生し、さらに、それへの対処も時間遅れが発生する。
たとえば、石油が枯渇するのに備えて、エネルギー源を石油から他のエネルギー源に切り替えようとするのならば、膨大な火力発電所をすべて他の発電施設に変え、内燃機関の乗用車もすべて電気自動車に切り替えないとならない。……どれだけの時間がかかることだろう。しかも、切り替えるために、また貴重なエネルギー(石油)を使ってしまう。
つまり、すべての現象には時間遅れがあるから、だから、将来の破綻を回避するために、今から準備しなければならない、っていうのがこの本の主張だと思う。まだ全部読んでいないけど、途中まで読んだ段階では、本当に対策を打つのが今しかない、という気分にさせられた。
ちなみに、この本を読んでいるのは、もともと興味があったから、っていうのもあるけど、それと、サステナビリティについて詳しく知りたいから、っていうのもある。
拡大し続ける成長から持続可能な道へ、っていうのが命題(この本のテーマ)ならば、そのときの目的関数は、持続可能性を示す指標になっているのではないか。おそらく明確に定量的な指標としては出てこないだろうけど、第2章まで読んだ限りでは、前作では登場しなかったエコロジカルフットプリントを取り上げており、興味深い。
エコロジカルフットプリントを持続可能な指標と定義できるのであれば、今のところ、俺は、それを60億で割った値以下に、我々のライフスタイルを抑制することによって、個々の人間が持続可能な社会の構築に貢献できるのではないか、と考えているのだけれども、それで正しいのだろうか。もうちょっと考えてみたい。
ちなみに、この本を読んで最も印象に残った文章は次の通り。
劇的効果をあおっているとは思われたくないが、国連事務総長として入手できる情報からは、次のように結論せざるをえない。国連加盟国が、古くからの争いを差し控え、軍拡競争の抑制、人間の生活環境の改善、人口の爆発的増加の緩和、そして開発に必要な力の提供などを目指して地球規模の協力を開始するのに残された時間は、おそらく10年くらいのものだろう。もしこうした地球規模の協力体制が10年の間に整わなければ、先に述べたような問題は、抑制不可能なレベルにまで悪化するだろう。
国連事務総長ウ・タントの言葉。1970年前半の発言と聞いて驚くほかない。
2006/06/16 00:23:24
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エネルギー問題って、無資源国家の日本が一番問題とすべき事なんだけど基本的にあまり深く考えられてないでつよね。まあ、きっと天才永江運兵さんがなんとかしてくれるに違いない。
そんな事よりスタイルシートはいつ更新されるのだろうか…
エネルギー問題って、環境(Environment)だけではなくて、経済(Economy)、安全保障(Energy Security)も同時に考えなければならなくて、難しい問題です。残念ながら、今の日本は、それに関する戦略が不足している気がする。
さて、スタイルシートですが、結構めんどいです。気長に待ってやって下さいませ。