環境影響量の意味

昨日に引き続き学会。
ということで、帰り際に知人と話した話。

たとえば、地域に工場があって、そこで重油を燃やしてSOxが1t出たとする。同時に、CO2が2t。さらに電力を使っていて、遠くの発電所でNOxが1t、SOxが1t、CO2が3t。さらに工場を建設したときに、回り回ってCO2が10t。ライフサイクルアセスメントを用いて工場を評価して、こんな結果が出たとする。

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ご存じのように、CO2は地球温暖化の原因。SOxとNOxは大気汚染の原因。環境問題は地球温暖化と大気汚染しか存在しないとしたら、これですべて評価したことになる。

しかし、この結果をそのまま、住民に説明して、わかってもらえるだろうか?

多分、無理。

情報が多すぎる。

情報を整理(つまりは統合化)しようという試みがある。その一つがLIME。日本版被害算定型環境影響評価手法(Life cycle Impact assessment Method based on Endpoint modeling)だ。いろいろと中の計算は難しいけど、すっ飛ばして説明してしまうと、要は環境影響を被害額に換算する仕組み。上記の場合も、x円という形で計算することができる。

しかし、このLIME。ちょっと問題がある。たとえば、近くの工場で排出されたSOx1tと遠くの発電所で排出されたSOx1t、同じように評価してしまう。住民にとって問題なのは、近くで排出されるSOxのはず。では、地域内と地域外の2種類に分けて計算すれば、それで問題解決だろうか。たとえば、地域内ではy円、地域外ではz円、というように。これを住民に渡して、判断してもらう、と(ちなみに、今のLIMEは環境影響を地域内外に分けて計算することは不可能)。

しかし、これでもよく分からないだろう。そもそも被害額とは何なのか?、ということがよく分からない。もし、被害額の説明さえ何とかなれば、住民は、地域内外の意味を自分で考えて、合理的に環境影響を判断してくれるかもしれない。

データが多いほど、精緻な研究はできる。でも、その分、出てくるアウトプットも莫大になる。研究者ならそれをそのまま見せても分かってくれるけど、一般市民はそうではないのは当然。今後、データはどんどん整備されていくだろう。そのときに、莫大なデータを元に計算した莫大な計算結果を工場なり住民なりの政策に生かしてもらうには、分かりやすく伝えるようにしないとならない。

口で言うのは簡単でも、実際にそうした仕組みをつくるのは難しい問題だ。

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このページは、NGEが2005年12月 2日 23:59に書いたブログ記事です。

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