成功は失敗の元

ひょんなことで、生化学の講義を聴きに行っていました。全然、専門外だけど。とある大学教授の最終講義。タイトルは講義の中で印象に残った言葉。これまでの研究を通じて、どういったことが教訓として得られたか、そういう話だった。

もちろん、生命系は僕らの分野とアプローチが異なる。特に医学は。生体の症状をまとめる。あるいは死後の解剖からデータをまとめる。仮説を立てる。データを集めて仮説が合っているかどうか確認する。それと実験。僕らの分野はどうか? 始めから理論はある。大学の教養レベル、それこそ高校で習うような力学や化学が基本。すべての現象は基本的な力学や化学によって記述可能だし、シミュレーションモデルもまた力学や化学を用いて記述される。現象を見て理論を考えたりする学問ではない。だから、必ずしも自分にとって役立つ話ばかりではなかったけど、自分用にメモしておきます。

2007/03/18 11:51:18

成功は失敗の元

―「失敗は成功の母」の間違いではない。

一番印象に残って、かつ、どの分野にも当てはまる言葉だと思う。新しい問題に当たったとき、それにどう対処すればするか? 適切な対処をすれば、それは新しい研究になりうる。しかし、一度大きな成功体験をしてしまうと、その成功体験が大きければ大きいほど、そのときの体験をうまく生かせないか、と考えてしまう。問題は別なのに。そうならないように、という教訓です。

てか、これは研究に限ったことじゃないな。

戦略的に研究せよ

研究をやっていれば、研究者たるもの、ついついいろんなことに引きずられがち。ある問題に関してある考え方。別の問題に関して別の考え方。もちろんそういったことも必要。でも、いろんな問題をトータルで見たとき、その大きな背景に対して、どういうふうに考えるべきか、そういった大きな思考を一貫して持っておけば、大きな研究ができる、とのことでした。はい。これは自分に対する一番の教訓かも。

焼け跡を見ているに過ぎないかもしれない

生命系ならでは、の話。特に医学。

焼け跡とは、たとえば家が火事で焼けた跡。焼け跡にはいろんなものがある。でも、それらがすべて火事の原因ではない。僕らは、実験などを通してモノが焼けていく理論を知っているから、焼け跡から火事の原因を容易に推定できる。

しかし、生物、特に人体の場合は、実験するわけもいかず、また生きている間に対象を殺さずに解剖することもできない。だから理論が分からない。ある病気で人が亡くなったとして、人体に残されているモノすべてが死因に関係しているわけはない。所詮焼け跡に過ぎない。でも、残されたものから逆に理論を推定するしかないのが医学であるらしい。ただ、あくまでも焼け跡に過ぎないことを忘れるな、とのことだった。

もっといろいろあったけど、とりあえず自分が覚えているのはこんなところ。さすがに面白い講義だった。

2007/03/18 11:51:18

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コメント(2)

爆烈 ぎがんと :

失敗というと失敗学… 某回転ドアとかで有名なアノ人を思い浮かべてしまいますが。
畑村?氏がNHKでやっていた失敗学特集みたいなのを思い出しました。1本10分か15分の番組を纏めて放送していて、某銀行システムとか、某国産ロケットとか某牛丼屋とか、ちょっと古いけど某国内航空旅客機の激突事故とか、色々事例を上げてなんか話をしていた気が。まあ、そんな関係の無い話を思い出しましたとさ。

んげ :

工学院大の畑村教授ね? 失敗学の。

エントリーでとりあげた「どのように研究をおこなうべきか?」については、個人の内面に負うところが大きいのでDB化は難しいと思っています。ただ、「どのように研究したらどのような成果が出たか」に関しては、畑村先生の事例と同じく、もっと失敗経験をDB化しておけば、有用なんじゃないかな、って思います。論文って成功経験しかDB化しないので。

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このページは、NGEが2007年3月16日 23:59に書いたブログ記事です。

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