日経エコロジー 2007年3月号

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日経BP. 日経エコロジー. No.93, Mar 2007.
ISSN 13449001

定期購読しているのに、忙しいと読まないまま終わってしまう「日経エコロジー」。最近はちゃんと読むようにはしているものの、ブログにきちんとまとめていることはなくて。ここに書くのは、2006年6月号以来。今回はまだ2回目。4月号は読み終わり、5月号は読み中だけど、記録を残しておくということで、ちゃんと覚えている3月号からまずここにまとめておきたい。

3月号の特集は「燃料で変わる自動車」。「バイオエタノールと電気が脱化石の扉を開く」と副題が付いている。とりあえず項目を列挙すると、

  • バイオ燃料
  • 電気自動車(特にプラグインハイブリッドカー)
  • 自動車メーカーの開発戦略

こんなとこか。記事の詳細は記事参照と言うことで、記事の概要に若干触れつつ、それに対してコメント。

まず、始めのバイオ燃料について。安部首相は、昨年11月に「国内の燃料消費の1割に当たる600万kLのバイオ燃料を供給する」として、生産拡大を松岡農水相に出した、とか。当面の目標は2010年に50万kLらしい。最近、バイオマス・ニッポンとかもあり、バイオ燃料の市場拡大に注目が集まっている。が、しかし、農水省による国産生産目標は「5年後に5万kL以上」という(今の国内生産量は1000kL)。この数値は余剰農作物10万kLのうち半分は回せるだろう、という推算らしい(残り半分は飼料などで既に使われていると想定)。

ということは、バイオ燃料といえども、9割方はブラジルなどから輸入する、ということか。しかも、国内の5万kLっていうのは多く見積もった数値であると思う。バイオマスの中でも、草本系バイオマスは、飼料や敷料あるいは堆肥化の際の副資材などなど、現状で、既に比較的有効利用されている量が多く(しかも有償で!)、半分もバイオ燃料に回せるのかなあ、とちょっと疑問。

バイオマス=カーボンニュートラル。地球に優しい。そんなイメージを持ちがちだけど、実際の所、石油の代わりにバイオマスを大量輸入する国、日本。そんなふうになってしまいそう。うーん。輸入した場合、それだけ輸送する分、当然環境負荷は発生し、化石燃料と比較した場合のCO2削減量は小さくなる。かといって、日本はバイオマスを集中的に得にくく、そのため、国産バイオマスはコストが高くなるだけでなく、CO2削減量も小さくなってしまう。こんなに大々的にバイオマスに取り組む必要があるのかなあ?、純粋にそう思ってしまう。北海道や東北などの大規模休耕田を大々的にバイオマスプランテーション化するのならば話は分からないでもないけど、そういった話は聞いたことがないし。謎。

次は、電気自動車について。現在、次世代自動車としては、

  • ディーゼルエンジンハイブリッドカー
  • 燃料電池自動車
  • プラグイン・ハイブリッドカー

が挙げられている。もちろん、既に実用化されているガソリンエンジンハイブリッドカー(のさらなる効率向上)は最有力だが、今後の話として。

少し前までは、燃料電池自動車は、結構脚光を浴びていた。でも、Well to Wheel分析(油井での採掘から車輪を使っての走行に至るまでの燃料使用効率の分析)をおこなってみると、実はディーゼルハイブリッドカーと大して変わらなかったりする(環境研によるW2W分析はこちら)。

一方で、電気自動車。昔からある技術にもかかわらず、充電池の充電密度が低いために普及してこなかった。しかし、ハイブリッドカーの量産化に伴い、研究開発が活発になって、充電池の性能が飛躍的に向上。まだ航続距離は市街地走行レベルにしか達していないけど、業務用車両として十分使えるレベルとか。そして、プラグイン・ハイブリッドカー ― コンセントから充電できる(プラグイン)ハイブリッドカー。市街地は充電池で走って、電池残量がなくなる郊外ではガソリンエンジンで走る車ならば、普通の自動車のように走れる。電気自動車の場合、火力発電で充電すると微妙だけれども、一般には昼間に走行するため、充電は夜間。原子力を主体とする深夜電力なら、CO2排出量も小さい、というわけ。

航続距離を考えると、電気自動車より燃料電池自動車かも。でも、プラグイン・ハイブリッドカーが実現した暁には、燃料電池自動車の出る幕はほとんどないような気がする今日この頃。

ちなみに、プラグイン・ハイブリッドカー(電気自動車ではなくてプラグイン・ハイブリッドカー)が大規模に導入されると、深夜電力が足りなくなり結局火力発電に頼るのでは?、という指摘もあるけれども、電中研の試算結果では、プラグイン・ハイブリッドカーのレベルでは、原子力のみで充電需要はまかなえるそうです(本当なら、電中研の試算結果にリンクを張りたいところなんだけど、ウェブ上にはないようです、残念)。

今の車を乗り終えて、次に乗るときは、電気自動車かプラグイン・ハイブリッドカーに乗ってみたいな。今の車、まだ1年ちょっとしか乗っていないのでかなり先の話だけど。

2007/04/27 00:21:55

そのほか、気になった記事。

高齢化に悩む米原子力産業 (pp.98-99)

原子力が脚光を浴びているけれども、技術者がいない、という話。

確かにそうだよな。日本でも、俺らが大学にいた頃は、原子力なんて全然人気がなかった。そもそも、俺が入るずっと以前に、不人気のあまり、原子力工学科は名前を変えたし。どこの大学でもそうだと思うけど。

ただ逆に言うと、当時、不人気な原子力工学科に敢えて進学して、一生懸命頑張っている人は、今を見通す先見の明があったということか。彼らは賞賛に値する。俺は、彼らに期待したい。

学科の人気はどうしてもそのときの社会風潮と連動する。不人気な学科ほどやる気のない学生が多いから、そういう学科に進むのは勇気がいることだろう。でも、学科を卒業して社会で活躍する頃には、また社会も変化している。入学時点での社会風潮に左右されず、自分が何をしたいか、何をすべきなのか、を考えて学科を選んで欲しい。本当にそう思う。

ポスト京都で重要な消費者の役割 生活様式の選択でCO2を大幅削減 (p.149)

ブッパタール研究所のレポート。当然ながらドイツでの結果。

経済活動のほとんどは一般家庭での消費が起源となっている(産業連関表なんて見ると正にその通りだが)。そういった意味で、国民1人あたりのCO2排出量を分析してみると、自動車や冷暖房の燃料だけではなく、すべての経済活動を1人あたりに帰着させることができる。その中には、生活様式と強く相関するものもあれば、ほとんど相関しないものもある。分析してみた結果、暖房が大きく生活様式と相関するだけでなく、個人消費、栄養摂取も生活様式と大きく相関することがわかったらしい。

つまり、個人レベルでCO2排出量を削減するのならば、暖房の設定温度を下げる、だけではなく、無駄なものを買わない、とか、露地物を食べるとか、そういったことでも十分貢献できる、っていうわけ。

最近、地球温暖化、何とかしなきゃ、って言われているけれども、個人レベルでは、空調と自動車の抑制くらいしかできることがない、と思われている。でも、そうじゃない、っていうわけ。そういった分析、日本でも欲しいな。機会を見つけてやってみたい。

2007/04/27 00:38:48

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コメント(4)

爆烈 ぎがんと :

技術の変化に生活環境が追いつかないということでしょうか? 一時期はそれほど気にもならなかったのに時代とともに脚光を浴びるとか?? うまく書けないな。しかし、生活様式を変えるには日頃からの意識が必要と思うのだが、これらは子供の頃からの教育の段階で行っていかないと駄目だろうなぁ、と、意味不明なレスを無駄にするのであった。

んげ :

最近の地球温暖化に対する意識の高まりから、環境に配慮した生活をしようと思っても、実践できていない人がたくさんいたりします。

最近は、冷房の設定温度を1℃上げてみる、なんてことが広まってきているし、ごみの分別だって、別に罰則まではないにもかかわらず、おこなうのが当たり前になってきている。こういうのは、子供の時の教育だけではなく、大人になってから身についたもののはず。

でも、実は、暮らしの中で、もっとCO2排出量を削減できるような行動もあったりする。それがおこなわれていないのは、どういった行動がCO2の削減に結びつくか、という情報が知られていないことにあると思う。たとえば、暖房を節約することがCO2排出削減に結びつくことを知っていて暖房の設定温度を下げる人が、ものを無駄に買わないようにしたり、路地野菜を選ぶようにしたりは、あまりしていないかもしれない。それは、暖房の省エネ以外の行動でも十分CO2削減につながるんだ、っていうことを知らないから。

暮らしの中で、どんな行動を取ればどれだけCO2排出を削減できるのか、そういった情報をみんなに提示できないかな、って考えています。

爆烈 ぎがんと :

いや、さすがにごみの分別は違う問題かと。私が言うのはNGEさんのいう知らない人がどうやってその事を知るのかって事ですね。TVのCMとかでバンバン放送すればわかるんだろうし、家庭の省エネが電気料の節約になればわかるけど、今のものより高いものを買って省エネとかって難しいのでは? って事と、今まで省エネだと思ってやってきたけど新しい技術でもっと他にいい方法が出来た時にどうやってそれを知るのかって事ですね。
今までやってきた事がよかったからそのまま続けるんじゃなくて技術が進歩すれば他の方法が見つかるかもしれないし見つからないかもしれない。それを常に意識していかないと駄目なんじゃないかと。そんな弧とでつね。

んげ :

とりあえず、次の2点かな?
1. 知らない人がどうやって知るのか。新しい省エネの方法とかも。常に意識し続けないといけないのでは?
2. 高価な省エネは難しい。

始めの1点は非常に重要な問題で、やはり大々的に宣伝しないとダメなんじゃないかな、って思っています。チームマイナス6%やクールビズといった官民挙げての活動で盛り上げるしか。でも、それだけでは不十分で、すべての情報をわかりやすくまとめたサイトを用意して、興味を持った人にはそこを見てもらうという方策も必要かな、と。大々的な宣伝は自分にはちょっと無理だけど、後者のサイト作成には何らかの形で貢献したいですね……。

2点目は、これは仕方ないかな、と。もちろんコストをかけてでもCO2削減に取り組んでくれたら嬉しいけど、家計の問題もあるし。コストはかけられなくても、ライフスタイルの変更(お湯の使い方や野菜の買い方など)でも十分CO2削減につながるので、それを意識して欲しいかな、と思っています。

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このページは、NGEが2007年4月27日 00:36に書いたブログ記事です。

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