無洗米

普段、お米は無洗米を選んで購入、無洗米を炊いてご飯にしています。……環境に優しいから。別にグリーンコンシューマーと言い切れるほどの消費者ではないけど。でも、友人に本当なの?と聞かれたので、ちょっと調べてみました。

Googleで検索すると、例によって安井先生が無洗米と普通米のLCAをおこなっていました。LCI分析をおこなった上で、LCIAをおこなっています。LCI分析とはライフサイクルインベントリ分析の略で、LCAの段階の一つ。製品の製造から廃棄に至るまでのトータルでの環境負荷物質(CO2とかSO2とか)の排出量あるいは資源の消費量を算出するもの。LCIAとは、ライフサイクルインパクトアセスメントの略で、LCI分析で得られた環境負荷物質が実際にどれだけの環境影響(地球温暖化とか大気汚染とか)を与えているか、ということを評価する手法。安井先生の分析結果は「戦略的創造研究推進事業 チーム型研究 (CREST)」でおこなわれた研究の一部になっていて、「社会的受容性獲得のための情報伝達技術の開発」という名前の報告書に載っている。無洗米の結果は、その報告書の18ページ(ページ番号だと279ページ)から。以前は同じ内容がウェブサイトにも公開されていたらしいが、どうも見当たらなかった。

さてさて、結果を見ると、普通米は無洗米と比べて、水消費量、BOD排出量、COD排出量に伴う環境影響がかなり大きくなっており(図3)、全体として無洗米の方が環境影響が小さくなっている。ちなみに、この結果は、普通米のとぎ汁の家庭内処理が18%程度(市場調査結果による全国平均推定値)の場合。とぎ汁全量を家庭内処理(庭に撒いたりプランターに撒いたり、とか)する場合には、水質汚濁や固定廃棄物量などの項目がことごとくなくなり、結果として、普通米の方がよくなるらしいです(グラフなし)。つまり、

  • とぎ汁を撒くのならば、普通米。
  • とぎ汁を撒かないのならば、無洗米。

といったところでしょうか。環境影響だけを見た場合ですが。ちなみに、我が家は集合住宅でプランターとかもないため、普通米のときはいつも下水に流していました。なので、無洗米に切り替えたことによって環境影響は削減できたはず。ただ、手間を無視すれば、それよりも普通米を購入してプランターとかに撒くようにした方がさらに環境影響が削減できるようです。なるほど。

2007/04/18 23:58:34

思うところあって追記です。折角コメントも頂いたことだし。

まず、報告書(PDF)記載の内容ですが、探したところ、安井先生のサイトにありました。……が、LCIとかLCIAとかは全くなくて、その後の結果しかない模様。もともとウェブサイトに載っていたらしいデータはどこに行ってしまったんだろうか?

さてさて。詳細は報告書を見て欲しいのですが、見ない人もたくさんいそうなので、以下、報告書の内容を簡単に抜粋してみました。

評価範囲

詳細は図1と図2を参照。無洗米と普通米とであったりなかったりするプロセスだけここで紹介すると、まず、普通米になくて無洗米にあるのは、以下。

  • 無洗米加工(無洗米加工機械と電力を投入)
  • 無洗米加工(粘着ぬかを排出、粘着ぬかは飼料や肥料を代替)

逆に、無洗米になくて普通米にあるのは、

  • 上水処理(電力を投入、汚泥を排出)*米とぎ用の水
  • とぎ汁の処理
    • 家庭内処理(環境負荷ゼロ?)
    • 下水処理(電力を投入、汚泥と放流水を排出)

で、このうち、粘着ぬかによる飼料・肥料代替効果は評価対象外として(つまり無洗米に若干不利なシナリオ)、LCIをおこなっています。平たく言えば、無洗米加工に対して、米とぎ用の上水処理と下水処理を比較した、という感じかな。

計算結果

残念ながらLCIの結果(CO2をどれだけ排出、とか)はなく、LCIAの結果のみ。LCIとしては産業連関表を用いた産業連関方式とプロセスのインベントリをさかのぼって積み上げていく積み上げ法の2種類を採用。LCIAにおける統合化にあたっては、EPS2000、エコインディケータ95、LIME、エコポイント97といった複数の手法を平均化した安井先生オリジナルのLCIA手法を用いて、評価をおこなっています。

その結果、産業連関方式では、普通米が7.4x10-14pt、無洗米が2.5x10-14pt。積み上げ法では普通米が4.5x10-14pt、無洗米が0.8x10-14ptとなりました(グラフ読み取りだから多少の誤差あり)。ちなみに、とぎ汁の家庭内処理を18%とした場合の結果。

感度解析

データの不確実性(とぎ汁の家庭内処理率とかLCIAでの統合化係数とか)を考慮するため、ありうる範囲内でデータに幅を持たせた分析もおこなっています(たとえば、とぎ汁の家庭内処理率を18~50%としている)。その場合でも、95%の確率で、無洗米が普通米よりも環境負荷が低いことが判明しました。

報告書はここで終わり。報告書からは、環境影響を比較すれば、無洗米の方が普通米よりも小さい、ということが判明。たとえば、積み上げ法を経たLCIA結果では、無洗米は普通米の1/3の環境負荷。差にして3.7ptの優位性がある。

でも、実は一番大きな問題が後に残っている。それは、この結果をどう解釈すべきか?、っていうこと。

当たり前だけど数値で比較する以上、どちらかの方が必ずどちらかより良い、という結果になる。この差が取るに足らないものなのか、それとも取るに足るもので、普通米から無洗米に切り替えるべきものなのか?

実は、安井先生の報告書ではこれは分からない。というのも、僕には、LCIAで算出された1ptの価値が分からないからだ(ついでに言うと、何kgあたりで3.7pt違うのか、も載っていない)。LCIAの困るところは、こうして統合した結果がどういう意味を持つか、にわかには判断できないことにある(これは以前もとりあげたけど)。まだ計算過程があれば統合化の過程を自分でトレースできるのですが、報告書ではLCIAの最後の統合化の結果しか載っていません。すると、何かと比較したりすることも困難だし、統合化した結果がどういう意味を持つのか(どんな環境影響が発生しているのか)を探ることも難しく。

ということで、残念ながらちゃんとした解釈にいたらず終了です。ただ、単純に環境影響の差だけを議論するのならば、始めに書いたように、

  • とぎ汁を撒くのならば、普通米。
  • とぎ汁を撒かないのならば、無洗米。

ということでしょうか。

2007/04/20 00:30:29

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コメント(6)

爆烈 ぎがんと :

実家が農家、とういか米を作っているので。
ウチは貧乏だから無洗米なんて作れんのじゃ、バーヤヽ(`Д´)ノ

こういうサイトもあるようなので、加工時に発生する環境への負荷も調べてくれるとありがたいのですが。
http://www.107heaven-earth.com/musen/musen1.html

私は情報弱者なので、断定するにはもう少し整った情報が欲しいところかな?

んげ :

教えていただいたサイトも見たのですが、とぎ汁が水質汚濁の元凶かどうか、0 or 1で判断しようとしていて、定量性に欠けるように感じました。昔と比べて、今の環境問題って、少しの汚染でも評価しないとわからない部分が多く、多少の負荷だから無視してよい、ということには必ずしもなりません(無視してよい場合も多いけど)。化学物質のリスクなんてほとんどがそんな感じです。

それから、エントリーで紹介したLCAでは、無洗米の加工時に発生する環境への負荷も含めて計算してあります。

なんて、ここで話すだけだと勿体ないので、LCA結果の解釈も含めて追記にまとめてみました。

爆烈 ぎがんと :

いや、すまん。朝見て書いたのでちゃんと見ていなかったかも知れん。まあ、素人なんで環境というか、単語が良くわからんというのがあるんだけど。

まあ、結局貧乏が悪いって事ですかね…

んげ :

論理が飛躍しすぎ……。

環境負荷の低い順に並べると、「普通米+家庭内処理 < 無洗米 < 普通米+下水処理」なんで、普通米の方がよいです。はい。

RIO :

>教えていただいたサイトも見たのですが、とぎ汁が水質汚濁の元凶かどうか、0 or 1で判断しようとしていて、定量性に欠けるように感じました。

初めまして。上記サイトの製作者です。リンクを貼っていただいたので、こちらに気づきました。

LCI分析の何たるかも全くわかっておりませんので、ピントはずれかもしれませんが、コメントさせていただきます。

まず、当店サイトは、一部の「無洗米推進派」に対するアンチテーゼです。その、主張一つ一つに反駁するだけのある意味、無意味な内容です。空疎と言っても過言ではありません。
「とぎ汁が水質汚濁の元凶かどうか、0 or 1で判断しようと」しておりません。ただし、彼らが、一方的に水質汚染の元凶だと一刀両断しておりますので、一方的に反駁すれば、所詮、0or1のレベルです。

ここからが本題です。
研ぎ汁=環境汚染、という主張は、つまり、窒素・リン過多→赤潮等の閉鎖域水域の汚染ということです。そして、窒素・リンを除去するために、下水処理をする=酸素を使う=電気を使う、ことが環境負荷だということです。
ところが、窒素・リン過多は、トイレが主原因(80%・70%)です。汲み取りをして、別処理をすれば、100%に近い除去率なのに、下水処理をしたために、増えてしまったわけです。
また、下水処理に流れる研ぎ汁が減ったからといって、設備が減ることは、絶対ありません。下水処理設備は、一定の水量・汚れを前提に建設されていて、その中に生活排水は含まれておりますし、研ぎ汁も計算のうちです。汚れは多すぎても少なすぎても問題になります。処理に伴う電気量が減る保証もありません。逆になるかもしれません。米の研ぎ汁など自然由来の汚れは、下水処理しやすい性質です。微生物がエサ=汚れを食べて死んでいくと底に沈殿していきます。このような処理に向いている物質です(下水処理場での聞きかじり)。沈殿してはじめて上澄み液を放流できます。沈殿せずに浮遊している問題がバルキングです。大規模下水処理場では、わかりませんが、畜産のし尿処理場では、バルキングが起きたときなど、バルキング対策薬の投与と同時に米ヌカを入れるよう指示されることがあるそうです。活性汚泥(=微生物)のバランスが良くなるんだそうです。

LCI分析は、このような複雑系を計算に取り込めるのでしょうか?率直な疑問です。

なお、上記もまた、知識レベルの話です。

昭和30~35年、戦後、お米をもっとも食べていた時期です。現在の1.5倍。精米のレベルも低く、米研ぎをすれば、泡がぶくぶく出ていたはずです。下水普及率も低く、ほとんど垂れ流しだったかと思います。この時期、赤潮等の被害はあったのでしょうか?
皮膚感覚での疑問です。

なお、お米をもっとも食べていたのは、昭和15年頃だったと思います。1500万トンくらい。昭和35年頃で、1200万トン。現在は、800万トンか。
今の、精米(普通の)は本当に仕上がりも良く、米の研ぎ汁から排出される窒素・リンもさらに少なくなっているはずです。

※「日本人は二千年もお米を食べてきたのだから、米の研ぎ汁は汚染源ではない」と書かれる方もいますが、これは事実誤認です。米を研いで食べる歴史は、ここ数百年ですから。

勘違いの指摘や異なる視点をいただければと思います。日々是勉強、我以外皆師也。

んげ :

コメント有り難うございます。このところ多忙のため、お返事すっかり遅くなってしまいました。すみません。

LCAに関してですが、おそらく平均配分というやり方で計算されていると思います。詳細は報告書を読まないと分からないのですが。

平均配分というのは、たとえば、省電力技術が導入されたとき、火力も原子力も水力も平均的に使用されなくなる、といったやり方です。それに対し、限界配分方式、という計算方法があります。限界配分方式では、省電力技術が社会に1単位だけ導入されたとき、現在の電力のピーク電力をまかなっているのは火力であるため、火力のみが使用されなくなる、といったやり方です。

限界配分方式の方が、現在の技術導入効果を正確に反映します。しかし、それを積み上げていって、社会に幅広く導入した際には、当然、電力の発電構成も変化してきて、必ずしも火力が削減される、というわけではなくなるので、整合性がとれなくなります。そのため、少なくとも僕の周りでは平均配分方式でのLCAを用いるのが一般的です。

ご指摘の下水処理の件に関しても、同じことが言えると思います。直ちには限界配分方式で考えた方が正しい(下水処理設備が減るわけではない)のですが、長期的には平均配分方式の方が限界配分方式よりまだまし、ということになります。

ただ、申し訳ないのですが、下水処理の方法の詳細を僕は知らないので、平均配分/限界配分以外に関してのコメントはもう少し待ってください。もうちょっと時間がとれたときに……。ちょうどmixiで議論になっているようで、それも参考にしたいかな、と思っています。ちなみに、米の研ぎ汁の歴史うんぬんは全く知りませんでした。身近なことでも知らないことっていろいろあるんだな、と改めて勉強になった次第です。どうも有り難うございました。

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このページは、NGEが2007年4月18日 23:56に書いたブログ記事です。

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